2009年11月28日土曜日

Dr.ハーストの医学教育論

Dr.ハーストの医学教育論. J. W. ハースト著/道場信孝, 高橋長裕訳. 医学書院

S藤先生のブログで紹介されていたので、図書館で借りて読んでみた。含蓄の多い内容で、読み手の成熟に比例して感じることも多くなる本だと感じた。薄い本だが、中身は濃い。真の教育とは何か、考えさせる一冊。

データの収集→再構築→実際への当てはめ(実践)
第一段階から第二段階の過程を思考という。確かに読書はすべきであるが、しすぎて思考を忘れないようにしないと。

常に新しい知識が正しいわけではない
日進月歩のこの世界、どうしても最新の論文・知識を追求してしまう傾向に警鐘をならしている。最新の知識を得ようとする好奇心はもつべきであるが、我々は古典からも学ぶべきことが多い。

患者の問題を何よりも優先されるべきであり、自分の都合、睡眠、食事、その他のことはすべて二の次だ
その気持ちを忘れないようにしたい。

知識の吐き出ししか評価できない択一式試験、知識の伝達だけに終始する冗長な講義・・・
本当に学ぶべきは、個々の知識ではなく、どうやって学ぶかだ。例え社会的身分としての学生が終わっても、学ぶ気持ちを忘れない「学生」でありたい。

2009年11月24日火曜日

感染症疫学

「感染症疫学 感染性の計測・数学モデル・流行の構造」 ヨハン・ギセック著 山本太郎・門司和彦訳

今まで、成書で潜伏期間がどうで感染経路がどうで、という結果だけを勉強していたが、その結果が作られる過程として、疫学というツールが効果を発揮することは勉強になった。

疫学の面白さ・難しさを知る上で最初に手にとるには良い。
ワクチンには直接効果(摂取者が罹患する確率を減らす・罹患した際の重症化を防ぐ)以外に間接効果(自分が感染しないことで周囲に広げることを防ぐ)があることは、集団免疫を考える上で大切だ。
risk vs benefitを押し測って、極稀な副作用を恐れて接種を任意にしてしまうことが、果たしていいのか?ワクチン後進国・麻疹輸出国である日本はどんなスタンスで行くのか、よく考えるべきだ。

以下長文になるが、現在の日本の予防接種のラインナップの乏しさを知ってもらいたく、なるべく平易に書こうと思うので、読んでもらえると幸い。

去年やっとインフルエンザ桿菌type Bのワクチンが導入され(もちろん自費で)、HPVワクチンもやっと今年になって導入された。
前者は、子供の髄膜炎(起こすと後遺症を残したりや死亡する危険が高い危険な病気)を引き起こす菌で、インフルエンザウィルスとは関係ない。以前は、この菌がインフルエンザを引き起こすと考えられていたため、この名前がついた。洋書では、髄膜炎の原因としては稀と書かれているが、残念ながらわが国では依然原因となりえる。導入後も在庫が追いつかず、予約待ちに去年末はなっていた(今年は改善されたと思うが、現状を知らない)。そして高いため、子供をもつ親御さんの相当な負担になる。それでも接種を希望される方が多いが。
後者は、子宮頸がんの発症を予防できる、いわゆる「癌予防ワクチン」とさえ期待されている。HPV(ヒトパピローマウィルス)のあるタイプに感染すると症状は出ないが、子宮頸がんのリスクが上がる。このワクチンを青年期前に打っておくと、子宮頸がんの発症を下げることができる。これも導入前に、若年層の性行動の乱れを助長しかねないなどと、反対意見があった。

以上、最近やっと導入されたワクチンについて述べたが、時々ニュースを賑わす百日咳など、打っていても時間とともに防御力は落ちるので、一定期間の後再度打つ(ブースターという)制度も足りないし、啓蒙されていない。

2009年11月23日月曜日

カナダでグラクソン・スミス社のワクチン使用中断

http://www.asahi.com/national/update/1122/TKY200911220249.html
http://www.dancewithshadows.com/pillscribe/glaxosmithkline-recalls-a-lot-of-h1n1-vaccine-pandemrix-from-canada-due-to-side-effects/
http://www.americanchronicle.com/articles/yb/137980569

当初予想されたより、H1N1ワクチンによる急性の副反応が多いため、GSK 社からカナダ保健省に対して使用中止をするように求めた。10万人に1人と予想されたアナフィラキー反応が、2万人に1人の割合であったからだそうだ。いずれも、注射直後に起こり、軽度のものとのこと。

日本のワクチン接種スケジュールも延期になるかもしれない。

副反応を恐れすぎて、効果の低い薄いワクチンにしても効果はほとんどないし。病気から守るためのワクチンで体を壊しても本末転倒だし。ワクチンは難しい。集団でみたrisk vs benefitの評価をしないと。特に今回は、初めての「新型」ウィルスに対するワクチン導入ということで、不確定要素も多い。

2009年11月22日日曜日

感染症外来の事件簿

「感染症外来の事件簿」 岩田健太郎

友達から借りたが、プレッシャーがかかったため、慌てて読んだ一冊。
随所に出てくるオススメ教科書や情報源、感染症にとどまらず医学全体の考え方・哲学など読んでいて非常にタメになった。
「レジデントのための感染症診療マニュアル」の該当箇所と合わせて読むと理解が深まる。

医学の世界でも(専門分野だけでない)広い知識が、そして医学だけにとどまらない広い知識が必要だと感じた。

立花隆思索ドキュメントがん

2009年11月23日(月) 午後10時00分~11時13分
総合テレビ

立花隆 思索ドキュメント
がん 生と死の謎に挑む

http://www.nhk.or.jp/special/onair/091123.html

久しぶりに見ようと思える番組。

2009年11月21日土曜日

タミフル耐性H1N1のヒト―ヒト感染

http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8370859.stm

タミフル耐性化は報告されていたが、そのヒト―ヒト感染確認の報告は世界初だ。
元々RNAウィルスであり、RNAがセグメントに分かれていることからも他のウィルス以上に変異しやすい。そのため、このような報告が出るのも時間の問題であっただろう。

接種の始まったワクチンの効果も全てが初めてであるため、確たることは誰にもわからない。

ワクチンでの予防より、体調不良の際には無理せず休んでくださいという社会全体の同意が蔓延を防ぐ一番の方法だと思う。社会情勢的には難しいこともあるだろうが。
その際に罹患証明だのを必要とすると、ただでさえ足りない医療資源の非効率的な配分につながる。

再来週、感染症のカンファレンスでH1N1の話を聞けるのが、待ち遠しい。

厚生労働省崩壊

厚生労働省崩壊-「天然痘テロ」に日本が襲われる日  木村 盛世

アマゾンから届いた瞬間に2時間で読み終わった。
時折ロハス・メディカルなどでお名前を目にすることがあり、ブログをみて、経歴にも惹かれて、読んでみようと思った。アマゾンでの読者評を初めて参考にしてみた。手にとって正解であった。

官僚の基本行動として、システムの維持のために保守的なことは当然であると思う。しかし、迅速な対応を余儀なくされる局面では、このシステムが裏目に出ることもある。
そのような負の側面が特に厚生労働行政に露わに顕れてしまっているのだと思う。

昨今、テレビをにぎわせている「仕分け人」も今まで見えないところでやっていたこのような予算編成作業を可視化したに過ぎない。そして、以前は個人的な好悪や根回しの仕方などの本質とかけ離れた「仕分け作業」がなされていたと想像に難くない。
官僚の対価と福利厚生が正確に表立って計上されておらず、将来関連団体のポストを渡り歩くことで、その分を回収するというものが「天下り」システムだと感じる。
組織の硬直化と表立って見えないシステムを守ろうという風潮に問題があるのだろう。そして「お上頼り」の傾向が拍車をかけている。
・・・「お役人」とひとくくりにしても、著者のような孤軍奮闘している方もおられるのだし、国を良くしたいと思って働いている方も多いはず。
そして、「お上頼り」ではなく、自分で考えて動けるようにしたい。

確かに日本は、唯一の被爆国であり、生物テロ被害国でもある。後者に対する国防は事件以後強化されているとは言い難い。

第7回若手医師セミナー2009

S藤先生の輸液の話。

http://bjnikotoyoro.blogspot.com/2009/09/blog-post.html

上記でも一回伺っていたので、なんとか話についていけた。
血清Na濃度→体全体の水の量
身体所見→Na量
ということだけでも記憶にとどめておきたい。
時間もみつけて、以前に紹介されたネタ本の教科書も読んでみたい。

M戸からTくばに帰ってきて車を乗り換えて、会場に辿り着くという(いつもの?)ドタバタっぷりだった。送ってくれた皆さんありがとうございます。

2009年11月15日日曜日

教養のためのブックガイド②

読了した。

明日から、大きな本は持っていけないので、とりあえず読んでしまおう、と思った。
自分の読書生活の偏りを直すにはいい本だった。ちらほら既に読んでいる本があっただけに、まだ少しだけ救いようがあるかもしれないと感じた。
とりあえず、西洋のバックグランドやイスラムの人達の考え方の底流を知るためにも、それらの本は読もうと感じた。

まだ、1年ちょいは大学の図書館に入れるので、その特権を思う存分行使しないのは、もったいない。

・・・と読み終わったと思ったら、アマゾンから本が届いた。別送のものの払い込みもしないと。贅沢すぎる。現代に生まれた幸せの一部を満喫している気がする。

・テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方 佐藤優
・東大教師が新入生にすすめる本 文春新書
・感染症疫学―感染性の計測・数学モデル・流行の構造 ヨハン・ギセック
を今週読もう。

A船山

今年3つ目の山(大菩薩山、富士山、そしてA船山)

天気が心配されたが、土曜日はBBQをして、今日は天気に恵まれた。2年前に一生分くらい雨に打たれたお蔭かもしれない。

土曜日は久しぶりに、ゆっくり料理した。普段は、1食あたりにかける時間は15分程度なのに。火から起こして、みんなでゆっくり料理しながら食べるという、当たり前のことを忘れてしまっていた。

運動不足気味の自分には最適な山だった。来年はいくつ登れるかな??

2009年11月13日金曜日

教養のためのブックガイド

「教養のためのブックガイド」 東京大学出版会

読了していないが、気づいたら半分読んでいたので、ここまでの感想を。

教養とは、自由を使いこなす力だと思う。現代は、過去に比べてこれ以上になく、自由だが、それを使いこなす力がないため、思考停止し、誰かに・何かに縋ろうとしている。なんとなく流されるということが多くはないか?

教養とは、運動をする上での筋力や体力と同じようだと思う。これらだけでは、競技がうまくなるわけではないが、これらが素地にないと長期的な伸びは期待できない。そして、今日明日の試合にすぐ効果の出るものでもない。
「教養を身につける」とは、「脳の鍛え方を習慣づける」ことだと思う。先ほどの比喩に例えれば「ランニング・筋トレをする習慣づけ」をすることだと例えられる。

学生でいられるのは、後1年半もない。この段階で再認しておいて良かった。
大学一年生になったばかりの鬼のように、何かに憑依されたかのような知識に対する(特に受験勉強以外の知識に対する)貪欲さを失いかけていた。

ぼくらの頭脳の鍛え方

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書) 立花 隆・佐藤 優

人間は読書を通じて疑似体験する。
効率よく学習するために「人から話を聞く」「ネットで調べる」にしても、最低限の教養は必要となる。前者では的確な質問を、後者では的確なキーワードを必要とするからだ。
ダークサイドについての知識も知っておかないと、その罠に陥る危険がある。

・・・と感じた。
興味の視野狭窄に罹患している自分にとって素晴らしい処方箋だった。
Tくばに帰ってきて、本屋に足を運んだ。

東大教師が新入生にすすめる本 文春新書
教養のためのブックガイド 東京大学出版会
中核VS革マル(上)(下) 講談社文庫
学問論
を5冊を買った。

このほかに
厚生労働省崩壊-「天然痘テロ」に日本が襲われる日
日常英会話モノローグ&ダイアローグ
First Aid for the USMLE Step 2 CS, Third Edition
Kaplan Medical USMLE Step 2 CS: Complex Cases: 35 Cases You Are Likely to See on the Exam
をamazonで注文している。

最近本買いすぎだな・・・知的投資には金・時間を惜しまないようにしたいけど。

2009年11月8日日曜日

今月の文春

今月の文芸春秋「小沢一郎 「新闇将軍」の研究/立花 隆」
http://www.bunshun.co.jp/mag/bungeishunju/

小沢一郎による権力の2重構造化、密室政治の弊害について言及されていた。
確かに、現在のマスコミの傾向(全てをウオッチしてるわけでは到底ないが)として、小沢一郎についての動静がほとんど伝えられていないのは、気になるところだ。

『田中角栄研究(上)』『田中角栄研究(下)』講談社
『田中真紀子研究』文藝春秋 2002年改
http://chez.tachibanaseminar.org/books/
などを合わせて読んでいるとよりこの記事の理解が深まると思う。良くも悪くも田中角栄は日本の政治に大きな影響を与え、その影響を受けている小沢一郎の権力の掌握で、名残が発揮されるのだろう。

政治に限らず、その成り立ちから現在に至る流れを知らないと、表面で起きた現象しか捉えられない。
最近、「知る」ことの対象が狭まってしまう傾向にあるので、適宜視野を広げるように気をつけないと。
最近仏語を勉強し始めた。語学を学ぶ時の最初に猛烈に伸びる感じが楽しい。

2009年11月3日火曜日

H1N1パンデミック@ウクライナ

http://www.who.int/csr/don/2009_11_01/en/index.html

ウクライナでH1N1がパンデミックが起こっている。
「2009年10月30日現在で2300人が入院し、うち1100人は子供であった。131人は集中治療を必要とされ、32人は子供であった。38人の方が重篤な急性呼吸器疾患で亡くなり、20-50才台の年齢層が優位に重篤化、亡くなっている。重篤例・死亡例は発症後5-7日後に医療機関を受診している。」

日本でも、今月から妊婦・発症すると重篤化しやすい合併症を有する患者さんに対してH1N1のワクチン接種が始まった。
既に医療従事者は接種しているが、医学生は最後らしい。

2009年11月1日日曜日

手洗い・うがい

新型インフル対策により手洗いが普及→他の感染症も減少 @ボリビア

http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1931223,00.html?xid=rss-topstories

手洗いしすぎて、手が荒れた。どうしても免疫状態が抑制された方と接する機会が多いので、仕方ないが。アルコールが沁みてしまう。ハンドクリームを小まめに塗っても回復が追いつかない。

日本人は潔癖になってしまう傾向にある。正常細菌叢(皮膚や口、腸に普通にいる細菌達、これにより病原性の高い細菌の増殖を防いでくれている)と仲良く暮らしたい。

そろそろ「新型」って呼び方をやめた方が、「H1N1」で十分な気がする。何か「新型」だから特殊な対応をしなくては、前例のない対応をしなくては、という雰囲気がある。

来週末に「季節性」インフルエンザの予防接種をする予定。