2009年11月24日火曜日

感染症疫学

「感染症疫学 感染性の計測・数学モデル・流行の構造」 ヨハン・ギセック著 山本太郎・門司和彦訳

今まで、成書で潜伏期間がどうで感染経路がどうで、という結果だけを勉強していたが、その結果が作られる過程として、疫学というツールが効果を発揮することは勉強になった。

疫学の面白さ・難しさを知る上で最初に手にとるには良い。
ワクチンには直接効果(摂取者が罹患する確率を減らす・罹患した際の重症化を防ぐ)以外に間接効果(自分が感染しないことで周囲に広げることを防ぐ)があることは、集団免疫を考える上で大切だ。
risk vs benefitを押し測って、極稀な副作用を恐れて接種を任意にしてしまうことが、果たしていいのか?ワクチン後進国・麻疹輸出国である日本はどんなスタンスで行くのか、よく考えるべきだ。

以下長文になるが、現在の日本の予防接種のラインナップの乏しさを知ってもらいたく、なるべく平易に書こうと思うので、読んでもらえると幸い。

去年やっとインフルエンザ桿菌type Bのワクチンが導入され(もちろん自費で)、HPVワクチンもやっと今年になって導入された。
前者は、子供の髄膜炎(起こすと後遺症を残したりや死亡する危険が高い危険な病気)を引き起こす菌で、インフルエンザウィルスとは関係ない。以前は、この菌がインフルエンザを引き起こすと考えられていたため、この名前がついた。洋書では、髄膜炎の原因としては稀と書かれているが、残念ながらわが国では依然原因となりえる。導入後も在庫が追いつかず、予約待ちに去年末はなっていた(今年は改善されたと思うが、現状を知らない)。そして高いため、子供をもつ親御さんの相当な負担になる。それでも接種を希望される方が多いが。
後者は、子宮頸がんの発症を予防できる、いわゆる「癌予防ワクチン」とさえ期待されている。HPV(ヒトパピローマウィルス)のあるタイプに感染すると症状は出ないが、子宮頸がんのリスクが上がる。このワクチンを青年期前に打っておくと、子宮頸がんの発症を下げることができる。これも導入前に、若年層の性行動の乱れを助長しかねないなどと、反対意見があった。

以上、最近やっと導入されたワクチンについて述べたが、時々ニュースを賑わす百日咳など、打っていても時間とともに防御力は落ちるので、一定期間の後再度打つ(ブースターという)制度も足りないし、啓蒙されていない。