2010年6月9日水曜日

Narsingdi report (Japanese)




2010年6月8日、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency 、以下JICA)が協力しているバングラデシュ、ナルシンディ(Narsingdi)の母性保護プロジェクトの視察に同行させていただいたので、報告します。

ナルシンディはダッカから車で1時間半程のところにあります。世界一の人口密度と言われるバングラデシュですが、ダッカの喧騒を離れると穏やかな自然が広がっています。ナルシンディはジャックフルーツを初め食材が多く採れ、ダッカから比較的近いため、ダッカにそれらを売ることで生計を立てています。

母性保護プロジェクトの地域会議に出席させていただきました。各地域にグループを作り、妊婦と胎児の死亡を防ぐ活動を行っています。この会議では、
1. 妊婦の把握
2. 妊婦の教育(妊婦検診の啓発)
3. 在宅出産、病院出産における連携、金銭的サポート
が主な役割です。地域の理解のある住民、妊婦、助産師、県の職員が参加しています。
運営費はコミュニティにより賄われていまして、訪れたコミュニティでは豊富に採れるジャックフルーツのいくつかを各家庭から寄付してもらい、その売上を運営費に当てるというユニークな方法をとっていました。この他にJICAが助産師の教育を支援しています。

その後、群の病院を訪問させていただきました。
バングラデシュでは、医師がプライベートクリニックでのアルバイトが法律で許可されています。そのため、収入につながりやすいそちらでの仕事に熱心になってしまい、公立の病院は医師不足に悩まされているという現状があります。
JICAが医療器具の導入や病院の改修を支援しているとのことでした。スタッフや機材が十分整っていえない状況の中でも、JICAの支援によりパフォーマンス向上に繋がっているとのことでした。
手術室を見学させていただきましたが、JICAの支援で導入されたオートクレーブが故障してしまい、その修理をちょうど行っていました。器具の支援は容易ですが、メンテナンス体制が十分整っていないため、支援された器具を有効に使い続けるのは、難しいです。

このプロジェクトの重要な点はコミュニティ・病院・県・中央の有機的な連携です(次ページ参照)。
地域レベルでは妊婦を保護するグループを作り、病院レベルではパフォーマンス向上を支援し、それら地域グループと群病院が妊婦の搬送が円滑に行えるように協力しています。県・中央レベルではこれらの取り組みから得た教訓を政策決定に反映しています。

 ICDDR,Bにて研修させていただく中で、多くの幼い命が失われていくのを目にし、いかに重篤な状態にならないように予防するかを考えていました。このようなプロジェクトが母体や胎児の死亡の防ぎ、早期発見早期治療に繋がれば、素晴らしいことだと感じました。

 今回の訪問は、JICA スタッフの皆様のご尽力、Y先生のご協力により可能となりました。この場を借りて感謝を述べさせていただきたいと思います。この貴重な経験を帰国後は共有し、日本・バングラデシュ双方の発展につなげられれば幸いです。
 今後ともプロジェクトの成功、益々の発展を心よりお祈りしております。