2010年5月2日日曜日
McGill大学感染症内科における実習の報告
2010/4/5~2010/4/30にかけてカナダ、モントリオールのMcGill大学感染症内科にて実習させていただいたので、ご報告させていただきます。
1ヶ月間、1つの病院にて学ばせていただいたので、あくまでカナダ全般またはケベック州全般について言及しているわけではないこと、また日本での経験も医学生として筑波大学にて経験したことを前提に考察していることを最初に断らせていただきます。
ケベック州はフランス語圏のため、日常生活はフランス語を使っていますが、McGill大学は英語系の大学のため、チャート(カルテに相当)は英語で記載されます。フランス語での会話を好む患者さんに対しては、他のスタッフの方や隣の患者さんに通訳をお願いすることで対処しました。実際、自分も挨拶と自己紹介しかフランス語ができない程度でした。
自分の場合は、公募でアプライをしました。カナダは米国に比べて比較的海外の医学生を受け入れています。大学からの受け入れが確定した後は、在日カナダ大使館からの一時滞在者査証の手続きがあります。
大学付属の病院というものはなく、大学といくつかの教育病院が提携しレジデントや医学生を受け入れていました。自分はその中のRoyal Victoria Hospital (RVH)という病院にて研鑽を積ませていただきました。伺ったところでは病院間では、大きな違いはないとのことでしたが、RVHは比較的移植件数が多く感染症内科が忙しい施設だとのことでした。
感染症内科の一日は、朝集まり新しいコンサルテーションや前日までのフォローアップの患者さんの担当を確認し、病棟に散っていきます。フォローアップの途中で、新しいコンサルテーションを受けていきます。昼過ぎに外来を終えたattendingのドクター(指導医に相当)を交えてチーム全員で集まり、それまでの報告やディスカッションをします。その後、新規コンサルテーションや問題症例をチーム全体で回ります。
経験させていただいたのは、敗血症、尿路感染症、脾膿瘍、蜂窩織炎、感染性心内膜炎、肺炎、猫ひっかき病などです。日本での臨床経験がないため単純な比較はできませんが、偽膜性腸炎とその疑いの患者さんは多い印象です。
最も印象に残ったのは、移植前評価のコンサルテーションです。潜在感染症の評価や移植前に勧める予防接種を考えるという経験をできたのは、大変貴重だったと思います。
コンサルテーションという立場のため、多くの病棟に伺う機会に恵まれました。印象としては、救急医療、ICU、移植医療がやはり日本より充実していると思います。特にERは、マンパワー・資材が充実しており、規模や位置づけが日本とは異なると感じました。移植医療も専用の病棟があり、免疫抑制状態での感染管理の難しさを学ぶことができました。それと共に日本での遅れを実感するに至りました。
様々な国から集まってきているので、スタッフも患者さんも様々な背景のため醍醐味があります。実際に、患者さんの出生地や滞在地が全世界に及んでいるので、個々の症例毎に考慮する起因菌も変わっていきます。
オマーンからのレジデントやメキシコからの医学生と一緒に研修し、仲良くなることができました。お互いの国の医療事情や医師としてのキャリアプランの違いを知ることができ、大変刺激になりました。
英語力を不安にされている方もいらっしゃると思います。自分も会話はできますが、少し抽象的なことや、ましてやディスカッションをできる程の英語力を持ち合わせてはいません。そのため、プレゼンテーションが一番の壁でした。他のスタッフがメモ書きでこなせるところでも、プレゼンの下書きや一緒に回っている医学生に対する練習をして十分な準備をして臨むようにしました。
日本が全体的に巣篭もり・内向きになりがちな中でも、オープンマインドさえ持って外に飛び込めば、広い世界と小さな自分を知ることができます。若いうちに多くの違う価値観に触れておくことは損にはならないと思います。