医療の倫理 星野一正
18年前に出版されたものだが、今読んでもなお考えるところが多い。根本的な倫理はわずか18年で大きく変わりはしない。
医療の内在する不確実性、科学と芸術の両方の側面を併せ持つ特異性、高度化したことによる複雑な生・死の境、・・・倫理的な判断を必要とされる場面は大いにある。
日本人についての考察で「出し抜かない、でも遅れはとらない」という表現はうまいと思う。
世間一般の流れから逸脱した自分は、「出し抜くことも、遅れをとることも気にしない」ようになってしまっているのだろう。
この国でそれなりにうまくやっていくには、阿吽の呼吸、いわゆるcontext richでないと限られたスペースでうまくはやっていけないだろう。この特性は利点と欠点を考えないといけない(度々言及してきているので、詳しい考察は省略)。欠点の面が顕著なものが、本書内で言及されている移植や献体の不足だろう。
教科書通りのclear cutにできることは全体的には少なく、その「さじ加減」を学ぶのが大切だから、研修があるのだ
・・・と昨日のW手医師セミナーでも伺った。本書にも書かれていた。同じ内容を異なるチャンネルからほぼ同時に受け取ったので、かなり強化されたはずだ。多分、どちらかのインプット時期がずれていたら、普通に流してしまっていただろう。
だから、教科書・成書から学ぶのも大切だが、それだけでは医師になれないのだろう。全く同じ疾患でも、その個人のもつ背景や置かれている社会的状況なども考えて最善の一手を考えないといけない。深い。