2009年12月4日金曜日

「理系」が未来を変える!

文理融合シンポジウム 「理系」が未来を変える!

に参加してきた。考えてみると医学系のセミナーや授業に参加するのは久しぶりだった。
都内のB国大使館にビザを取りに行った帰り、面白そうなシンポジウムをO君から告知されていたので、足を運んでみた。(というより、帰り道だったので寄ってみたという方が正しいのかもしれない)
行ってみたら副題が「博士人材の社会貢献とキャリアパス」となっていて、自分には場違いであったと感じたが、聴いていたらなかなか面白かった。

基調講演は毎日新聞科学環境部の元村氏で、日本のを取り巻く現状の厳しさを指摘した。人材・金・資源・信頼がないにも関わらず、競争は激化している。そして、専門が細分化されており、連携ができていない。
I型、T型、П型と表現していたのは面白かった(いずれも下に伸びるのが専門分野で上にある横棒は幅広い知識)。従来の理系がI型であったが、より後者になれるようにとのことだ。

続いて、パネルデスカッションで元村氏、西村氏、朝日氏の3氏が熱い議論を交わされていた。
西村氏の持論は、大学は道楽で、共産圏崩壊+グローバル化→多くの低賃金労働者出現→先進国で大学進学率上昇、つまり大学は失業対策なのだ。科学→技術→経済というliner modelはそもそも存在しない。というネガティブな側面を強調されていた。
一方の朝日氏は大学で先端研究に触れることで、研究力(独創力)と社会力(深い教養、正しい倫理感、自己と他者の正確な把握の上のコミュニケーション、変革を牽引するリーダーシップなど)を得ることができ、それには大学が一番だ。だだし、大学の問題として、①教える側に社会シテラシーがないため、それが身につかない学生を輩出してしまう②優秀な学生を研究室内に飼い殺してしまい、「他流試合」をさせていない。
両氏とも言っている事は同じことで、それらをポジティブに言うかネガティブに言うかの違いだけだった。

社会に対して説明責任を果たしてこなかったため、「事業仕分け」はそれを見直す良いきっかけではないか?これからは、研究室だけに留まらずに、理系の素養をもった人材を広く社会に輩出する役割を大学が担うべき。そのためには、たこつぼ化していた分野間の壁を完全に取っ払うことはできなくても、壁の向こう側を覗いてみたり、壁を薄くする努力をしなくてはならない。

聴いていて、専門性と教養の両立の重要性、専門分化され不十分な連携など医学にも通じるところが多い。科学界の縮図が各分野にあるのだろう。
そして、経済状況の悪さから、皆の将来への不安がすごく感じられた。雇用の心配が少ないだけでも(労働環境は決して良くはないが)恵まれているのかもしれない。この危機感は、自分たちの分野に波及するのもそう遠くはないだろう。確かに「聖域」論だけで、いつまでも費用を確保できるほど、甘くない時代はもうそこまできている。金銭感覚のない理系は、これからは生き残れないだろう。
個人的には○○力という表現には、胡散臭さが漂う感を禁じえないが・・・