「史上最悪のインフルエンザ」 A・W・クロスビー
1917~1918年に流行ったインフルエンザについての本。まさに史上最悪。今から40年くらい前に書かれたが、今日でも学ぶべきことが多い。
前半は軍隊(時同じくしてWWⅠ)や地域での流行を記録に基づいて詳細にリアルに描かれている。そして、パリ講和会議にもたらした影響。後半はいかに病原体をウィルスと決めたか、という研究者達と研究手法の話。当時はファイファー桿菌が原因と考えられていた。
WWⅠやその時代背景を知る上でも貴重な資料になっている。
そして、ウィルスが残っていないため、あの流行の原因は解明できていない。
確かにあの時代より、医学は進歩しているし、公衆衛生も改善されている、世界大戦最中でもない。しかし、それらのアドバンテージすら凌駕する変異をしてこないとは誰にもわからない。
医学は、少数の患者に集中的にエネルギーを投入して治すのは得意だが、大多数の患者に効率的にエネルギーを投入するのは苦手であるという作者の考察には納得させられる。
翻って現在。新型インフルエンザ確定例が10,000に達した。
T大の対策指針としては、保育園や幼稚園が休園になった際に、他に面倒をみられる人はいなければ、親が休めるようになっている。ちゃんと配慮してるのは評価したい。一律に、集うことを禁止すると、社会の至るところにそのしわ寄せが寄ってくる。
第2波や次なるインフルのために、迅速診断キットはセーブしておくべきだと思う。国内流行期に入った今はもう、健常人に対して検査しても、「自宅安静」しか治療はないので、outcomeに変化ない。検査するのは、ハイリスク群(タミフル投与の対象となりうる)のみで十分ではないか。既に迅速キットも品薄状態になりつつあるらしい。